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白壁 恭子

MCBII Q and A


4月18日にMCBIIの講義をさせて頂きました。
たくさんの有意義な質問を頂いたのでこの場を借りてお答えさせて頂きたいと思います。

まず授業の始めに自分のバックグラウンドを説明しなかったのでここで説明させて下さい。
私は理学部出身の基礎研究者(non MD)です。
なので特定の疾患とは関係なく自分自身がこれは大事だ!とかこれは面白い!と思う事を、
研究対象にしてきました。
それが生命の部品である蛋白質同士がダイナミックに相互作用する翻訳後修飾であり、
その中でも現在は"シェディング"であるという事になります。
そして医学・非医学両方の立場からの研究が融合する事こそが、
本当の意味で生命科学研究を強固にするのではないだろうかと考えています。

それでは以下質問に対して答えさせて頂きます。

シェディングって不要な物を取り除く機構じゃないの?
最初に動詞shedのニュアンスを説明したかっただけなのですが、逆にシェディングの重要性を否定するような説明になってしまい反省しています。シェディングは一見邪魔な物を取り除くだけの機構と思われがちなのですが、実は膜蛋白質の働きを極めて巧妙に制御する機構なのです。本来可溶性の蛋白質として細胞間の情報伝達に機能するような蛋白質がなぜか膜蛋白質として作られてシェディングされて初めて働く。それはシェディングによって適切な時期に切り出されるというもう一段階の制御が可能になるからです。一方で既に細胞表面で働いている受容体の働きを即座に抑えるために切り離してしまう事もできます。抗原提示に働く膜蛋白質もコンスタントにシェディングされて交換されています。リアルタイムの抗原提示を可能にするための機構なのでしょう。つまりシェディングとは比較的迅速に膜蛋白質や細胞自身の機能を不可逆的に変えてしまう事ができるという絶対的な力を持った翻訳後修飾機構なのです。

シェディング研究と医療との関係は?
これまでに疾患に関わるいくつかの蛋白質がシェディングを受ける事が報告されています。一つは細胞の増殖を促進する蛋白質(増殖因子)で、その働きが過剰になる事が細胞の癌化を誘導すると考えられています。またリューマチ等で関節の炎症を誘導するTNFaもシェディングを受けますし、アルツハイマー病の患者さんの脳で蓄積が見られるアミロイド蛋白質もシェディングを受けます。これらのシェディングを調節する方法が見つかればそれぞれの疾患の治療に結びつく可能性がありますが、そもそもシェディングの調節機構はほとんどわかっていません。私がいくつかの"森を見る研究"を比較する事でそれぞれのシェディングに必要な要件を抽出したいといっていたのは、このシェディングの調節機構を理解したいという事に他なりません。今後の研究を通じてシェディングの調節機構を明らかにする事ができれば、これらの疾患の治療にもつながるのではないかと考えています。

シェディングされる蛋白質を見つけたあとにどうやってその役割を見出すの?
それこそが森を見る研究の最大の難関と言えるでしょう。今回の場合はVIP36について既に報告のあった役割について解析してなんとか結果が出せました。役割を見つけるのに何年かかったの?という質問も頂きましたが2、3年でしょうか。

VIP36が細胞内に取り込まれる機構は?
一般に細胞外の物質は細胞膜の小さな袋に包まれてから取り込まれます。VIP36はそれ自身小さな袋を作る分子を集める働きがあると考えられているので、それらの分子を活性化して取り込みを促進すると考えられていました。しかし今回の結果からシェディングされないと取り込みを促進しない事が示唆されたので、、、、ここから先は私の全くの推測ですがシェディングされて小さな断片として膜に残ったVIP36に膜の形を変える働きがあるんじゃないかと考えています。かなり突飛かもしれませんが実証を試みてみようと思っています。

VIP36が取り込む蛋白質は決まっているの?
現時点では全くわかりません。

VIP36以外のシェディングの細胞外物質の取り込みへの影響は?
そもそもシェディングと細胞外物質の取り込みとの関係自体が新しい(はずな)ので全くわかりません。VIP36とは逆の方向に関わっているシェディングがある可能性は十分に考えられます。

VIP36のシェディングに必要なアミノ酸はもっとしぼれないの?
現時点ではしぼれていません。四つのうち一つずつつぶしてみましたが全く正常にシェディングされます。アミノ酸配列に完全に依存しているというよりも何らかの三次元構造に依存しているからではないかと考えています。

キメラ蛋白質の作製により三次元構造は変化しないの?
どこからどこまでを三次元構造と呼ぶかにもよりますがそもそも配列を変える事自体多少なりとも三次元構造を変化させます。今回の4アミノ酸の変異も少なからず三次元構造を変えていると考えています。

シェディングは常に起こっているの?それとも誘導されるの?
どちらもあります。それぞれのシェディングされる蛋白質についてコンスタントに起こる成分と刺激で活性化される成分があると考えています。LPSでシェディングされると説明したMCSF受容体もコンスタントにシェディングされる成分を持っています。コンスタントなシェディングと刺激依存的なシェディングとで関わるプロテアーゼが違うという話もありますが、それほどはっきりとはわかっていません。

細胞の分化状態などによってシェディングされる蛋白質は変わりますか?
まさに知りたい所です。これこそ森を見る研究の力が発揮される所だと思っています。

シェディングの阻害にはメタロプロテアーゼの阻害剤だけで十分なのですか?
メタロプロテアーゼ以外の酵素によるシェディングを抑える事はできないので十分ではないかもしれません。またメタロプロテアーゼの阻害剤はシェディング以外の蛋白質分解も抑えてしまうのでそこも注意が必要です。

シェディングが細胞表面で起こっている事は2D-DIGEの結果でわかっていたのでは?
厳密に言うとわかっていませんでした。VIP36は培養液から見つかった蛋白質ですが細胞内でシェディングされてから放出される可能性もあったからです。実際に細胞表面に至るまでの仮定でシェディングを受けると考えられている膜蛋白質もいくつかあります。

Mycが標識になる仕組みは?
岡田先生の授業に出てきた山中ファクターの一つでもあるMyc蛋白質にはとてもいい抗体がありまして、その抗体が認識するアミノ酸配列をMycタグと呼んでいます。このアミノ酸配列を人為的に目的の蛋白質につけて発現させると抗体が認識してくれるようになる訳です。Myc以外にもいくつかこのような配列ー抗体関係がありタグとして使われています。

2D-DIGEってどうやって色を付けるの?
各種蛍光蛋白質(GFPの発見はノーベル化学賞を取りましたね)をくっつけるのです。具体的にはリジンというアミノ酸の側鎖に化学的にくっつけます。ちなみに大腸菌に蛍光蛋白質をつける時も同様にしていると思います(会社が作った物なので自信はありません)。

研究者になろうと思ったきっかけは?
なんでしょう??ただ昨日わからなかった事が少しずつでも今日わかるようになるという毎日が気に入っている事は確かです。これを解決するにはどうしたら良いだろうかとずっと考え続けてふと良い方法(たいていはどうして気づかなかったのかと思うような方法ですが)に気づく瞬間はたまりません。特にその方法で問題を解決できた時はひとしおです。

研究していて大変な事は?
大変な事がない仕事なんてないと思いますが、まあ強いて言えば思った結果がなかなか出ない時は苦しいです。ただ自分で考えた方法でやっているのですから自己責任だと思えるのが楽な所でしょうか?


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2011-04-21 14:18

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